教員養成(再課程認定)について
日本の教員養成は、特定の大学に限らず一般の大学にも開かれ、いわゆる「開放制の教員養成」の原則をとっています。(戦前は、師範学校等においてのみ教員養成を行っていました。) 昭和28年(1953年)、教育職員免許法が改正され、「課程認定」の制度が整いました。
ただし、今日では、開放制の原則のもと、「教員養成に対する明確な理念(養成する教員像)の追求・確立がなされていない」、「教職課程の組織編成やカリキュラム編成が、必ずしも十分整備されていない」大学があるなどの課題も指摘されています(中央教育審議会『今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)』(平成18年7月11日))。
目下、教員免許業務に携わる大学関係者の関心事は、今年度末に迫った再課程認定の申請でしょう。いよいよ、今月から文部科学省による各地区での説明会が始まりました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kyoin/1387995.htm
教員免許業務は、関係する多くの法令の解釈作業に加え、自大学のカリキュラムの知識が不可欠であり、しかも、制度改正も多く、非常に複雑な業務となっています(実際、たびたび大学のミスが報道されています)。今回の再課程認定に関しても、新たな知識が必要になりますが、これまでに出版された本も教免業務の理解に有用です。
小野勝士・村瀬隆彦・上西浩司・中井俊樹編『大学の教員免許業務Q&A』(玉川大学出版部、2014年)
『教員免許更新制ガイドブック』(文教協会、2016年)(※文教協会は今年6月30日に解散しました。)
国立大学協会について
http://www.janu.jp/news/whatsnew/20170720-wnew-hikkei.html
最近では、いわゆる研究大学(Research University)の団体「RU11(学術研究懇話会)」が発足するなど(2009年)、設置形態を越えた連携の動きも活発になっているようです。
*RU11 http://www.ru11.jp/index.html
9月の学会(大学教育関係)について
9月は、学会シーズンの1つです。学会が平日に行われる場合は、授業がなく、会場(教室)も借りやすい春季(3月)か秋季(9月)の休暇中に開催されるのが一般的です。土、日を中心に実施される学会は、入試の時期や学期初めを避け、初夏か初冬に設定されるようです。
9月に開催される大学教育に関わる学会(年次大会)を2件紹介します。
・初年次教育学会〔第10回大会〕
9月6日(水)、7日(木)中部大学/春日井キャンパス
http://www.jafye.org/conf/conf2017/
・日本教育工学会〔第33回全国大会〕
9月15日(金)~18日(月・祝)島根大学/松江キャンパス
https://www.jset.gr.jp/taikai33/
学会は研究者にとって重要な活動の場であり、大学関係者にとっても、教員の理解に欠くことのできない非常に重要な要素の一つであると思います。そもそも、学会はいつ、どのように成立したのでしょうか。以下の本の「学会の成立と展開」という章に、その経緯(英国のロイヤル・ソサエティから、科学が制度化され、広く学会が展開された19世紀まで)を簡潔にまとめられています。
学校教育法の改正(大学への編入学)について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1370599.htm
大学の年次途中への入学は、編入学以外にも転学(他大学からの学生の異動)や再入学があります。学生にとっては進路の選択肢が増えることになりますが、大学にとっては、それに対応したカリキュラムの整備が必要になるのはもちろん、滞りなく教務の業務を遂行する必要性が生じます。
教務の実践に役立つ本として、以下の本を紹介します。中井俊樹・上西浩司編『大学の教務 Q&A』(玉川大学出版部、2012年)
FD/SDのネットワークについて
米国において、FD(SD)の専門家の団体POD(The Professional and Organizational Development Network in Higher Education)が設立されたのは、1976年でした。英国のSEDA(Staff and Educational Development Association)は、1993年から活動を開始しています(SCEDとSRHEが統合され誕生)。それぞれ大規模な年次大会が開かれ、技能の向上のための議論や情報交換が行われているようです。
*POD http://podnetwork.org/
*SEDA https://www.seda.ac.uk/
日本に目を向けると、FD/SDの専門職集団が形成されている状況にはありませんが、大学設置基準においてFDが義務化された平成20年(2008年)の前後に、FD関係のネットワーク、協会等が相次いで設立されました。
全国規模のネットワークとしては、国立教育政策研究所の研究活動を元に誕生した日本高等教育開発協会(JAED、平成21年 (2009年)設立)、36の私立大学が加盟する日本私立大学FD連携フォーラム(JPFF、平成20年 (2008年)設立)などがあります。
*JAED https://www.jaedweb.org/
*JPFF http://www.fd-forum.org/fd-forum/
地域のネットワークの代表的な例として、四国地区大学教職員能力開発ネットワーク(SPOD)を紹介したいと思います。SPODは、平成20年(2008年)に設立され、四国4県の32の国公私立大学、短大、高専が加盟しています。様々な研修の機会が提供されていますが、特に毎夏開催されるSPODフォーラムが有名です。今年は、8月23日から徳島大学で開催されます。(因みに筆者も参加します。)
・SPODフォーラム2017
8月23日(水)~25日(金)徳島大学/常三島キャンパス
https://www.spod.ehime-u.ac.jp/wt/forum/
FDにも様々な手法や目的がありますが、授業の基本を知ることは教員にもFD担当者にも有用でしょう。以下の本には、授業のアイデアやヒントがつまっています。
大学評価関連のイベント(8月)について
認証評価が導入されたのは平成16年(2004年)ですが、その年、法人化された国立大学では、あわせて法人評価への対応も必要になりました。
現在、盛んに提唱されているIR(インスティテューショナル・リサーチ)や教育の質保証も、特に国立大学の文脈では、大学評価への対応という側面が大きかったことは否定できないと思います。
8月下旬、大学評価への関心から始まった2つの団体のイベントが開催されますので、紹介します。
・大学評価・IR担当者集会(大学評価コンソーシアム)
8月23日(水)~25日(金)立命館大学/大阪いばらきキャンパス
http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php
・高等教育質保証学会〔第7回大会〕
8月26(土)、27日(日)大阪大学/豊中キャンパス
http://jaquahe.org/03news.html
筆者が、初めて大学評価に関わったときのテキストを紹介します。個人的な話を書かせてもらえれば、第1回目の認証評価の際は、この本の著者から直接多くのことを学ばせていただきました。
関口正司『教育改善のための大学評価マニュアル-中期計画実施時の自己評価に役立つ25のポイント』(九州大学出版会、2004年)
個人情報保護法の改正について
5月30日、平成27年9月に成立した改正個人情報保護法が全面施行されました。平成15年に個人情報保護法が成立して以来の大規模な改正になります。
改正のポイントはウェブ上で簡単に確認できるので、詳細はそれらに譲りたいと思います。(例えば、以下の3ページ目にまとめられています。)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/151117_tf1_s4.pdf
個人情報保護の強化を図ると同時に加工情報の活用を促進することが意図されているようですが、大学を管理運営する立場の職員にとっての最も大きな変更点は、これまでの主務大臣制が廃止され、個人情報保護委員会に監督権限が一元化されることかもしれません。つまり、この件について、文部科学省から大学の事情に特化したガイドライン等の指針が示されることはなくなりました。大学は、個人情報保護法改正の趣旨を踏まえ、学内規則の改定や運用の見直しを独自に進めることが求められます。
各大学において、滞りなく規則や規程を整備するのは案外難しいものです。法律や省令等の最新の知識に加え、自大学に関する認識や法令用語を駆使する技能などの複合的な能力が必要になるからです。
大学職員が、法令用語を正しく理解、また、解釈し、学内の規則等を作成するため、以下の類の本を手元に置いておくと便利です。
IDE大学協会について
現在、高等教育関係の学会、団体、コンソーシアム等の組織は枚挙にいとまがありませんが、比較的老舗の団体にIDE大学協会(Institute for Development of Higher Education)があります。IDEは、昭和29年(1954年)、民主教育協会(Institute for Democratic Education)として設立され、平成18年(2006年)、現名称になりました。
http://ide-web.net/index.php
一般には、年10回発行される冊子『IDE 現代の高等教育』によって知られているかもしれませんが、例年、各支部でセミナーも開催されています。IDE大学セミナーは、学園紛争最中の昭和44年(1969年)、IDE学生生活研究セミナーとして始まったもので、半世紀にわたり継続して開催されています。(約50年の各回のテーマを眺めるだけでも、その時代の大学の様子が偲ばれます。)
この夏に開催されるIDE大学セミナーは以下のとおりです。
・北海道支部 8/28(月)、29日(火)「新しい教養教育の展開」
・東海支部 8/29(火)「学生ピアサポートをいかに組織するか」
・近畿支部 8/25(金)「人工知能と教育 -人工知能と人間の共進化を促進する教育とは-」
・中国四国支部 8/22(火)「高大接続 -大学入試改革-」
・九州支部 9/9(土)「大学のグローバルな高大接続戦略 -海外からいかに優秀な人材を受け入れるか-」
(東北支部は11/29(水)に、本部(首都圏)は2018年3/23(金)に開催予定)
筆者は、『IDE 現代の高等教育』を定期購読しています。6月号の特集は「職員の人事マネジメント」でした。
IDE大学協会の歴史を知るには、以下のような協会の記念誌が参考になります。
『業績と回顧』 (IDE・高等教育研究所/ IDE50周年・高等教育研究所25周年記念誌、2004年)