大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

「大学スポーツ振興の推進事業」について

 今月23日、スポーツ庁から、「大学スポーツ振興の推進事業」に15大学(うち6大学は昨年からの継続)を選定したとの発表がありました。
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/30/07/1407448.htm

 この事業は、大学スポーツ・アドミニストレーターの配置等の大学におけるスポーツ活動を支援するもので、第2期スポーツ基本計画(平成29~33年)にそうものです。スポーツ基本計画は、平成23年に制定されたスポーツ基本法の規定に基づいて策定されています。

 

 なお、来春には大学スポーツの活性化を目指す統括組織「日本版NCAA(全米大学体育協会 NCAA:National Collegiate Athletic Association)」が設立される予定になっています。

 *「大学スポーツの振興に関する検討会議」最終とりまとめ
 http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/005_index/toushin/1383246.htm

 

 大学スポーツに関する書籍の出版や高等教育関連の雑誌でも特集が組まれること(例えば、以下に挙げる「IDE」の冊子)が増えています。

 東京オリンピックの開催決定やスポーツ庁の創設(平成27年)、何よりスポーツの経済的効果への期待から、大学スポーツへの関心が高まっています。もっとも、大学スポーツが大学自体にどれほどの恩恵(志願者の増加、スポーツの収益性など)をもたらすかについては懐疑的な見方もあります。

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IDE 現代の高等教育(2017年7月号,No.592)』(IDE大学協会、2017年)

地方大学振興法について

 前回に続き、法律に関する話題です。

 昨年、東京23区内の大学の定員増を原則として認めないという政府の方針が話題になりましたが、そのことが法律として定められました(10年間の時限措置。対象地域(東京23区)は別に政令で指定)。

 「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」、いわゆる、地方大学振興法の成立です(平成30年6月1日公布)。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/daigaku_tsuuchi.html

 

 

 その他、この地方大学振興法では、地域における大学振興・若者雇用創出のための交付金制度の創設等、東京一極集中の是正に向けが取組が示されています。

著作権法の改正について

 この5月、著作権法の一部改正が行われました(平成30年5月25日公布)。デジタル化、ネットワーク化の進展に対応した著作権法の改正が提言されてきたことは、以前、このブログでもふれていました。

 

著作権法の一部を改正する法律案
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1401718.htm

 

 今回、第35条(学校その他の教育機関における複製等)が改正されたことで、授業の過程での公衆送信による著作物の利用が円滑に行えるようになりそうです。「授業の過程での公衆送信」の代表例として、LMSが挙げられると思います。

 

 九州大学の教材開発センターでは、著作権法第35条の改正に先駆けて、著作権セミナー(3/1)が開催されましたが、現在、その模様と資料が公開されています。
http://www.icer.kyushu-u.ac.jp/180301copyright
http://www.icer.kyushu-u.ac.jp/sites/default/files/copyright_seminar_20180301.pdf

夏の学会(8月後半~9月)について

 学生の夏季休暇中など、通常、授業が行われない時期に多くの学会が開催されます。8月後半から9月にかけては学会が集中する期間ですが、高等教育業界に関連しそうな学会のうち、この時期に年次大会が開催されるものを、既にこのブログで紹介したものも含め、以下にまとめました。

 年次大会の回数をみると、その学会の設立の背景を想像することができます。

 

・日本科学教育学会〔第42回年会〕
 8月17日(金)~19日(日)信州大学/長野キャンパス
 http://www.jsse.jp/jsseam/modules/note4/

・大学情報・機関調査研究会〔第7回研究集会〕
 8月18日(土)、19日(日)国立情報学研究所学術総合センター
 http://mjir.info/

・大学評価・IR担当者集会〔第12回〕(大学評価コンソーシアム)
 8月22日(水)~24日(金)九州工業大学/戸畑キャンパス
 http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=target139

・高等教育質保証学会〔第8回大会〕
 8月25日(土)、26(日)中央大学/後楽園キャンパス
 http://jaquahe.org/03news.html

・日本リメディアル教育学会〔第14回全国大会・総会〕
 8月27日(月)~8月29日(水)創価大学
 http://www.jade-web.org/conference/conference.html

日本教育学会〔第77回大会〕
 8月30日(木)~9月1日(土)宮城教育大学
 http://www.jera77.jp/

・日本学習社会学会〔第15回大会〕
 9月1日(土)、2日(日)立命館大学衣笠キャンパス
 http://learning-society.net/taikai.html

・大学行政管理学会〔第22回定期総会・研究集会〕
 9月1日(土)、2日(日)桜美林大学/町田キャンパス
 http://juam.jp/wp/im/assembly/2018_22/

日本教社会学会〔第70回大会〕
 9月3日(月)・4日(火)佛教大学/紫野キャンパス
 http://www.gakkai.ne.jp/jses/conference/

・日本インターンシップ学会〔第19回大会〕
 9月3日(月)、4日(火)香蘭女子短期大学
 http://js-internship.jp/taikai.html

・教育システム情報学会〔第43回大会〕
 9月4日(火)~6日(木)北星学園大学
 http://www.jsise.org/taikai/2018/index.html

 ・初年次教育学会〔第11回大会〕
 9月5日(水)、6日(木)酪農学園大学
 http://www.jafye.org/conf/conf2018/

・留学生教育学会〔第23回年次大会〕
 9月7日(金)、8日(土)広島大学/東広島キャンパス
 http://jaise.org/nj-news.cgi?mode=dsp&no=102&num=

・日本テスト学会〔第16回大会〕
 9月8日(土)、9日(日)東京家政大学/板橋キャンパス
 http://jartest16th.jp/

・日本国際バカロレア教育学会〔第3回全国大会〕
 9月8日(土)岡山大学/津島キャンパス
 http://jaiber.org/infomation/

日本教育心理学会〔第60回総会〕
 9月15日(土)~17日(月・祝)慶應義塾大学/日吉キャンパス
 https://confit.atlas.jp/guide/event/edupsych2018/top

・日本カウンセリング学会〔第51回大会〕
 9月16日(日)、17日(月・祝)松本大学
 http://www.jera77.jp/

日本教育工学会〔第34回全国大会〕
 9月28日(金)~30日(日)東北大学/川内キャンパス
 https://www.jset.gr.jp/taikai34/

・教育史学会〔第62回大会〕
 9月29日(土)、30日(日)一橋大学/国立西キャンパス
 https://kyouikushi62.blogspot.com/

「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」について

 先日、中央教育審議会大学分科会将来構想部会から、「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(平成30年6月28日)」が公開されました。この秋にも答申が出される予定になっています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1406578.htm

  この「中間まとめ」では、今年(2018年)生まれた子供たちが大学を卒業する2040年頃を見据え、高等教育の「将来像の提示と政策誘導」を図ったものです。

 

 新たな”将来像”の答申となると、平成17年(2005年)の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」以来のものとなります。http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm

 

  平成17年の将来像答申から遡ると、平成10年(1998年)には大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について ―競争的環境の中で個性が輝く大学―」がありました。

 比較的短期間で答申が繰り返されることをみても、高等教育を中長期的に展望し、政策誘導の前提となる将来像を描くことの困難さが伺えます。

 以下の書籍は、高等教育研究の碩学による大学改革に関連する16の講演、エッセイ等を集めたものです。

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天野郁夫『大学改革を問い直す』(慶應義塾大学出版会、2013年)

リメディアル教育について

 昨日、初年次教育に言及するなかでリメディアル教育(Developmental Education)にふれましたが、リメディアル教育についても学会(2005年設立)があり、8月に以下のとおり全国大会が開催されます。

 

・日本リメディアル教育学会〔第14回全国大会・総会〕
 8月27日(月)~8月29日(水)創価大学
 http://www.jade-web.org/conference/conference.html

 

  初年次教育やリメディアル教育のような高大接続に関わるものだけではなく、専門教育のあり方、卒業後の進路(就職、産業界からの要請等)など、今日の大学が抱える課題の多くが高等教育の量的拡大(大学の大衆化、学生の多様化)に関係していると言えるでしょう。

 以下の書籍は、大学の大衆化をテーマにした、「シリーズ大学(全7巻)」のうちの一冊です。

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『大衆化する大学 ー学生の多様化をどうみるか』(岩波書店、2013年)

初年次教育について

 現在、ほとんど全ての大学で、高校から大学へのスムーズな移行を促す教育、いわゆる初年次教育が実施されていることと思います。初年次教育の内容として代表的なものは、アカデミック・スキル、情報リテラシー、キャリア・デザイン、自校教育等があります。

 日本で初年次教育の導入が始まったのは、2000年頃とされています。この時期は、多くの大学で教養部が廃止されており、また、学生の多様化が進んでいました。

 2008年(平成20年)には、初年次教育学会が設立されています。9月には、以下のとおり年次大会が開催されます。

 

初年次教育学会〔第11回大会〕
 9月5日(水)、6日(木)酪農学園大学(北海道江別市
 http://www.jafye.org/conf/conf2018/

 

 日本よりいち早く学生の多様化が進んでいた米国では、1970年代後半以降、初年次教育(First Year Experience)が始まったとされています。初年次教育は、新入生を大学教育に適応させる(中退を予防する)効果が高いとされ、米国の外にも広まることになりました。

 初年次教育の射程が定まるようになると、補習教育(リメディアル教育)とは、明確に区別されるようになりました。

 

 大学1年生のためのアカデミック・スキル(リーディング、ライティング、プレゼンテーション、調査・情報収集、グループワーク等の基本的な技能)に関するテキストが数多く出版されています。各大学のオリジナル版のテキストが市販れてることも珍しくありません。

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学習技術研究会『知へのステップ ー大学生からのスタディ・スキル(第4版)』(くろしお出版、2015年)

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山形大学基盤教育院『スタートアップセミナー 学習マニュアル -なせば成る』(山形大学出版会、2010年)

大学基準協会について

 この3月、大学基準協会から『学習成果ハンドブック』が刊行されました。第3期の認証評価(平成30年(2018年)~)では、内部質保証システムの構築に関する取組がより重視され、学習成果の測定や検証結果の活用がポイントになることを踏まえてのものです。
https://www.juaa.or.jp/news/detail_546.html

 

 現在、大学基準協会を認証評価機関としてのみ認知されているひとも多いことと思います。しかし、大学基準協会は、認証評価の開始(平成16年(2004年))よりはるか以前の昭和22年(1947年)、米国のアクレディテーション団体をモデルに設立されています。

 昭和31年(1956年)、民間団体である大学基準協会の「大学基準」に代えて、文部省が大学設置基準を省令化したことは、戦後日本の大学の在り方、文部省と大学の関係にとって、重要な転換点になったとする見方もあります。

 

  本文中で紹介した書籍です。購入方法は、大学基準協会のウェブページに記載してあります。

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大学基準協会『学習成果ハンドブック』(2018年)