大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」について

 今月、文部科学省から「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」が公表されました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1413322.htm

 大学改革に関して、高等教育機関へのアクセスの確保、大学教育の質保証・向上、研究力向上、教育研究基盤・ガバナンス強化の4点を軸に改革の方向性が示されています。今後、関連法案が国会に提出され、審議されることになります。

 

 以下の書籍は、大学職員が学べる大学院を紹介したときに挙げた東京大学大学院 教育学研究科(大学経営・政策コース)から出されたテキストです。

 大学の制度のや構造の特徴、教育・研究のマネジメント、大学経営・政策の国際的な潮流など大学の経営・政策に関わる領域を包括的に採り上げています。

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東京大学 大学経営・政策コース(編)『大学経営・政策入門』(東信堂、2018年) 

 

 

平成30年度教職課程再課程認定の結果について

 昨年度、このブログで教職課程の再課程認定について書きましたが、平成30年度の結果が中央教育審議会の部会資料として公開されていますので紹介します。

*平成30年度課程認定大学等一覧【再課程認定】 
 http://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/01/1412972.htm

(なお、改組に伴う通常の課程認定はこちら。http://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2018/10/1410178.htm

 

キャリア・アンカーについて

 前回、URA(大学におけるリサーチ・アドミニストレーター)について書きましたが、そもそもどのような経歴の人がURAになっているのでしょうか。 

 ある調査によると、URAの前職(所属組織)は、大学等56.0%〔事務系職員21.8%、教育職・研究職18.9%、学生等5.4% 他〕、民間企業等26.2%、公的研究機関13.2% 他となっています(文部科学省「平成28年度大学等における産学連携等実施状況について」(平成30年2 月))。URAは新しい職種なので、現在URAに就いている多くの人には前職がある、つまり異なる職種から転職してきたと言えます。

 

 大学にも多様な職種があり一概に言えることではありませんが、案外、転職の経験者も少なくないように感じます。URAのような「第三の職種」(伝統的な教員・職員のキャリアと異なる職種)が増えたり、大学の業務がますます多様化すると、異業種からの転職者がさらに増えるかもしれません。

 

 転職に関連した話題として、米国の組織心理学者エドガー・シャイン(1928-)が提唱した「キャリア・アンカー」という概念が思い起こされます。キャリア・アンカーとは、職業生活における個人の拠り所や価値観のことです。

 大学の第三の職種や大学経営人材の適性を議論するとき、要請される知識や技能に注目されますが、職務遂行に当たって何に価値を置いているか、どんなことに動機づけられているかという態度(キャリア・アンカー)も非常に重要な要素に思えます。

 

 キャリア支援を専門としない大学関係者の多くも、学生対応だけでなく、職員もしくは研究者のキャリアの相談や支援の経験があるのではないでしょうか。そして、自身の今後のキャリアについて考える機会も少なくないことと思います。

 以下の書籍では、本文中のシャインの理論を含め、キャリア研究の理論とキャリアカウンセリングの実践について幅広く紹介されています。

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渡辺三枝子編著『新版 キャリアの心理学〔第2版〕』(ナカニシヤ出版、2018年)

URAの質保証(認定制度)について

 文部科学省において、URA(大学におけるリサーチ・アドミニストレーター)の質保証(認定制度)について検討が行われ、昨年9月、「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」としてまとめられました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1409052.htm

 早ければ(社会的環境が整えば)、平成33年(2021年)に認定制度が導入されるということです。

 

 日本におけるURAの配置は、平成23年(2011年)に始まった文部科学省の公募事業「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」が大きな契機tとなって本格的に始まりました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1315871.htm

 

 さきに紹介した答申(「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」)でもURAへの言及がありますが、URAは、現在のところ、いわゆる「第三の職種」(伝統的な教員・職員のキャリアと異なる職種)の代表的な存在として認知されています。

文部科学関係予算(案)について

 昨年末、政府の平成31年度(2019年度)予算案が閣議決定され、文部科学関係の予算総論が文部科学省のウェブページに公開されました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h31/1408722.htm

 

 国立大学に関しては、運営費交付金等はほぼ横ばい(1兆970億5500万円)、国立大学経営改革促進事業は前年度から5億円の増(45億2千万円)となっています。

 私立大学等経常費補助については、前年度から5億円の増(3159億円)となっています。

国際人権規約(高等教育関係)について

 今月のブログで、大学の無償化や学生納付金にふれたので、大学の費用負担に関する国際的な規定にも言及したいと思います。

 1948年の世界人権宣言において、高等教育の機会均等(第26条)がうたわれていますが、「宣言」を条約化した国際人権規約(1966年)では、以下のように規定されています。


社会権規約13条2

(c)高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。

 

 日本が国際人権規約を批准したのは昭和54年(1979年)ですが、上記の条項の「特に、無償教育の漸進的な導入により」に拘束されない権利を留保していました。この留保を撤回したのは、平成24年(2012年)のことです。つまり、高等教育の無償化の促進は、日本の国際公約となっています。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/tuukoku_120911.html

 

「学生納付金等調査」について

 このブログで、何度か大学の授業料について書いてきましたが、今月、「私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査」の結果が、文部科学省から公開されましたので紹介します。http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031.htm

 それによると、私立大学入学者に係る初年度学生納付金(授業料、入学料、施設設備費)は平均で1,333,418円となっています。分野別にみると以下のとおりです(詳細はウェブ上の資料を確認してください)。

*私立大学入学者に係る初年度学生納付金(平成29年度)

  文科系学部  1,165,310円
  理科系学部  1,540,896円
  医歯系学部  4,770,957円

 なお、国立大学の初年度学生納付金は、817,800円(授業料535,800円、入学料282,000円)となっています。

 

大学の無償化について

 2020年4月から実施が予定されている高等教育段階の教育費負担軽減方策、いわゆる大学の無償化について、その議論の動向を注視している関係者も多いのではないでしょうか。文部科学省のウェブページに関連情報がまとめて掲載されています。 11月22日には、対応ポイント(案)やFAQが掲載されました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm

 

 今回の大学の無償化の議論において、支援措置の対象となる大学の要件に、実務家教員による授業科目の配置や法人の理事への外部人材の登用等が挙げられたことが注目されました。これらの要件の提示は、大学運営への政府の介入として危惧する声もあります。

 国の財政支援方策が機関補助から利用者補助へシフトしたとしても、政府の大学へ規制が弱まるかどうかは別の問題であり、制度の理念や運用方法に依るようです。

 以下の書籍は、2013年に「大学運営と税財政法上の課題」を統一テーマに開催された日本財政法学会のシンポジウムの記録です。

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日本財政法学会編『大学運営と税財政法上の課題』(全国会計職員協会、2014年)