大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

履修証明制度について

 今年4月、学校教育法施行規則が改正され、履修証明制度の総時間数の下限が120時間から60時間に引き下げられました。

 この措置は、昨年11月に取りまとめられた中央教育審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」のなかで、リカレント教育の充実のために、より短期の実践的なプログラムの認定が提言されたことに応えたものです。
 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/22/1365328_002.pdf

 

 そもそも、履修証明制度が正式に始まったのは学校教育法が改正された平成19年(2007年)のことで、それ以降、大学は学位取得を目指す課程とは別に教育プログラムを開設し、修了者には正式に(学校教育法に基づいて)履修証明書〔Certificate〕を交付できるようになりました。

*大学等の履修証明制度について
 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shoumei/

 

大学入試への民間英語試験の活用見送りについて

 このブログでも何度かふれてきましたが、民間の英語認定試験の大学入学共通テストへの活用について、本日、文部科学省から、その導入を見送ることが発表されました。令和6年度に実施する試験から、新たな英語試験の導入に向けて、今後検討されるそうです。

http://www.mext.go.jp/a_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/11/01/1422381_01.pdf

 

 民間英語試験の大学入試への活用の是非、また、今回の措置について、おそらく多くの人が意見や不満をもっていることと思います。個人的な感想ですが、今回の騒動は、ある意味、政府と大学の関係を象徴する出来事のようにも思えます(どのような意味でかは各人の解釈にお任せしたいと思いますが)。

 

     ≪追記(2019,11/2)≫
  国立大学協会から、この件に関して会長コメントが公開されましたので紹介します。
https://www.janu.jp/news/20191101-wnew-comment.pdf


「Society 5.0」について

 政府が提唱する「Society 5.0」というコンセプトは、中央教育審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」でも言及され、高等教育関係の学会・協会のシンポジウムなどでも度々採り上げられるようになりました。次回の大学教育学会課題研究集会でもテーマの一つになっています。 

・大学教育学会〔2019年度課題研究集会〕
 11月30日(土)、12月1日(日)エリザベト音楽大学広島市
 http://daigakukyoiku-gakkai.org/site/conference/conferenceinfo/

 

 ただし、「Society 5.0」は抽象的な概念であり、具体的にどのように大学のカリキュラムに反映させるのか、または、何をもって「Society 5.0」に向けた人材育成といえるのかは、説明の難しいところのように思います。

国公立大学のガバナンス・コードについて

 以前、私立大学連盟と日本私立大学協会からそれぞれガバナンス・コードが公表されたことを書きましたが、国立大学協会公立大学協会からも同様にガバナンス・コード作成に向けた活動がありますので紹介します。

国立大学協会「国立大学ガバナンス・ コード骨子」(2019年6月)
 https://www.janu.jp/news/files/20190612-wnew-governance.pdf

公立大学協会公立大学の将来構想-ガバナンス・モデルが描く未来マップ-」(2019年5月)
 http://www.kodaikyo.org/wordpress/wp-content/uploads/2019/06/srks_v2.pdf

 

 

 

 今回の動きのなかで、国公私の大学団体のほかに、大学監査協会からもガバナンス・コードが公表されています。

*大学監査協会「大学ガバナンスコード」(2019年7月)
 http://j-uaa.jp/about/disclosure/governance_code20190711.pdf 

 

 

AO入試について

 10月に入り、AO(アドミッションズ・オフィス)入試が始まっている大学も多いのではないでしょうか。

 そもそも、AO入試とは、米国の大学の入試(アドミッションズ・オフィスの専門の職員によって、SATや高校の成績、推薦状、これまでの活動の記録、面接等により、多様な側面から能力、適性を評価する入学者選抜方法)をモデルにして、平成2年度入試から慶応義塾大学で初めて導入された入試方式です。国立大学では、平成12年度入試から、東北大学筑波大学九州大学の3大学でスタートしました。

 もっとも、AO入試の理念は別にしても、その実態については、様々な批判(別形態の推薦入試ではないか、入学者の早期確保の手段ではないか、大学生の学力低下につながっていないか)があるのはご存知のとおりかと思います。

 

 

高等教育の修学支援新制度(大学無償化)の対象大学等について

 今年5月10日に「大学等における修学の支援に関する法律」、いわゆる大学無償化に関わる法律が成立したのをうけ、高等教育の修学支援新制度が始まりましたが、このほど、その制度利用を申請し、対象になった大学等が発表されました。

 大学、短期大学、高等専門学校では申請した機関全てで要件を満たすと判断されました。国立・公立の全ての機関が申請した一方、私立の大学・短期大学のうち31校が申請を見送っています。

 

*大学等における修学の支援に関する法律
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/detail/1415448.htm

*高等教育の修学支援新制度の対象機関(確認大学等)
 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/1420041.htm

 

教職大学院について

 先日、文部科学省から本年度の教職大学院の入学者選抜実施状況が公表されました。それによると、総入学定員2054人(前年度比645人増)に対し、総入学者数は1649人(前年度比279人増)で、入学定員充足率は80.3%(前年度比16.9ポイント減)となっています。

*令和元年度国私立教職大学院入学者選抜実施状況の概要
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1420959.htm

 

 そもそも教職大学院とは、教員養成に特化した専門職大学院で、平成20年(2008年)4月にスタートしました。教職大学院の創設については、平成18年の中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」において提言されていました。

 教職大学院は、新人教員の養成と中核的中堅教員(現職教員対象)の養成の2つを目的としています。現在、全国に54の大学院があり(国立47、私立7)、修了者には専門職学位として「教職修士(専門職)」が授与されます。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kyoushoku/kyoushoku.htm


 また、教職大学院創設の年に、日本教職大学院協会が設立されています。
http://www.kyoshoku.jp/profile.html

文部科学大臣と学校教育法第3条について

 先日の内閣改造により文部科学大臣の交代がありました。平成13年(2001年)1月の省庁再編により誕生した文部科学省ですが、今回で20人目の大臣となります。

 文部科学省の長である文部科学大臣には、大学の設置許可や基準制定に関する権限があるとされています。その根拠は、学校教育法第3条に「学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない」とあるためです。従前、「文部科学大臣」の箇所は「監督庁」とされ、附則で、当分の間、文部(科学)大臣とされていましたが、平成11年に現在のたかちに改められました。

 

 大学設置基準の省令化の是非をめぐっての議論はありますが、その権限が文部科学省にあることは学校教育法のうえでは整合的であると判断されています。文部省が大学設置基準を制定・公布したのは、昭和31年(1956年)ですが、それに至る過程は以下の書籍で詳しく追ってあります。田中征男(1944-2013)の代表作とみなされてる本です。

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田中征男『戦後改革と大学基準協会の形成』(大学基準協会、1995年)