大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

各国の大学入学のための共通テストについて

 日本以外の国々にも、大学進学に際し、共通テストを実施する仕組みがあります。米国のSAT(Scholastic Assessment Test)やACT (The American College Testing Program)、イギリスのGCE(General Certificate of Education)、ドイツのアビトゥーア(Abitur)、フランスのバカロレア(baccalauréat)などです。

 隣国に目を向けると、韓国では大学修学能力試験(修能)、中国では全国高等院校招生統一考試(高考)が実施され、その熾烈な競争や社会的関心の高さが、しばしば日本でも報道されています。

 もちろん、各国の入試制度の違いにより、共通テストの位置づけも大きく異なります。特に注意すべきことは、大学の制度や教育内容、中等教育との接続の仕組みです。
 大学入学後、直ぐに専門教育が行われるヨーロッパでは、イギリスのシックスフォーム(大学への進学を目指すための課程)、ドイツのギムナジウムやフランスのリセの進学準備課程が、それぞれの共通テストの性格と深く結びついています。
 米国では、単位制である高校と、学士課程では主に一般教育(general education)が行われる大学とのマッチングのために独自の入試システムをとっています。大学入試は、選抜のための試験はなく、高校の成績、コミュニティ活動、エッセイ、SATのスコアなどを、それぞれの大学の入学基準やポリシーを踏まえ、総合的に判断して合否が決まります。共通テストの内容も、そのような入試の特質を反映したものとなっています。

*SAT https://www.collegeboard.org/(※SATの主催団体「College Board」)
*ACT http://www.act.org/

 

 大学が岐路に立たされているのは日本だけではありません。各国とも大学の拡張政策が、新たな構造的問題を生じさせていると言えるでしょう。

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潮木守一『世界の大学危機』(中公新書、2004年)