大学について考えるブログ

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「骨太方針」における入学定員抑制方針について

 6月9日、いわゆる「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~)」が閣議決定され、そのなかで、東京23区内の大学の学部の新設・増設を抑制し、原則として定員増を認めない方向性が示され、大学関係者を越えて話題になりました。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/decision0609.html

 もっとも、来年度(平成30年度)の状況に関しては、明治大学〔1030人増〕、東洋大学〔569人増〕、日本大学〔472人増〕など、入学定員を増加させる大学が相次いでいます。
 関西圏でも、近畿大学〔920人増〕、同志社大学〔326人増〕、立命館大学〔195人増〕などが入学定員を増加させています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/1384323.htm


 2000年代以降、都心部へ回帰する大学の動きが顕著になってきました。その要因として、中央教育審議会「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(答申)」(平成14(2002年)年8月5日)により、大学新設規制が原則として撤廃されたこと、また、昭和51年度(1976年度)から大都市への大学の新増設を抑制してきた高等教育計画等が平成16年度(2004年度)をもって終了したことなど(工業(場)等制限法は平成14年(2002年)に廃止)の政策上の動きに加え、急激な少子化等の環境の変化がありました。
*高等教育計画等
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/002/gijiroku/010801/5-20.htm
中央教育審議会「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(答申)」(平成14年8月5日)
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/020801.htm

 

 社会情勢の変化や分散キャンパス解消などの大学の事由により、大学が都心部から郊外へ(または郊外から都心部へ)移転や拡張がたびたび行われてきました。
 日本では、大学とともに街が形成され、発展し、大学と街が密接な関係を保っている街は残念ながら少ないように感じます。

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木方十根『「大学町」出現 -近代都市計画の錬金術』(河出書房新社、2010年)