大学について考えるブログ

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80年代の米国の大学の状況について

 前回、中央教育審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」について書きましたが、日本の大学の将来を考えるとき、米国の大学の歩みを確認してみることに一定の意義があると思います。(もっとも、単純な比較には慎重になるべきですが。)

 

 今日の日本の大学を取り巻く環境は、青年人口の減少、高等教育予算の削減など、冬の時代の到来が予想された1980年代の米国の大学の状況に似ているという指摘があります。

 米国では、80年代の青年人口の減少を前に、多くの大学が影響を受け、淘汰されるという予測がありました。しかし、実際には、この間に大学数、学生数ともに増加しました。米国の各大学が、危機感をもって自己改革を行い、新たな需要を掘り起こした結果でした。

 

 前々回、東京工業大学の授業料改定(値上げ)について書きましたが、収入を増やし、教育の質の向上を図ることでアピールする方法は、80年代の米国の大学がとった手段の一つです。(反対に、経営の健全化のため、大学の予算を大幅に削減することは、現実的には非常に難しいものがあります。)

 80年代の米国では、私立大学を中心に授業料は高騰しますが、同時に充実した奨学金を準備する方策がとられるようになりました。

 

  本文中に書いた80年代の米国の大学の状況については、以下の書籍に詳しい記述があります。

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喜多村和之『大学淘汰の時代』(中央公論社、1990年)