大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

キャリア・アンカーについて

 前回、URA(大学におけるリサーチ・アドミニストレーター)について書きましたが、そもそもどのような経歴の人がURAになっているのでしょうか。 

 ある調査によると、URAの前職(所属組織)は、大学等56.0%〔事務系職員21.8%、教育職・研究職18.9%、学生等5.4% 他〕、民間企業等26.2%、公的研究機関13.2% 他となっています(文部科学省「平成28年度大学等における産学連携等実施状況について」(平成30年2 月))。URAは新しい職種なので、現在URAに就いている多くの人には前職がある、つまり異なる職種から転職してきたと言えます。

 

 大学にも多様な職種があり一概に言えることではありませんが、案外、転職の経験者も少なくないように感じます。URAのような「第三の職種」(伝統的な教員・職員のキャリアと異なる職種)が増えたり、大学の業務がますます多様化すると、異業種からの転職者がさらに増えるかもしれません。

 

 転職に関連した話題として、米国の組織心理学者エドガー・シャイン(1928-)が提唱した「キャリア・アンカー」という概念が思い起こされます。キャリア・アンカーとは、職業生活における個人の拠り所や価値観のことです。

 大学の第三の職種や大学経営人材の適性を議論するとき、要請される知識や技能に注目されますが、職務遂行に当たって何に価値を置いているか、どんなことに動機づけられているかという態度(キャリア・アンカー)も非常に重要な要素に思えます。

 

 キャリア支援を専門としない大学関係者の多くも、学生対応だけでなく、職員もしくは研究者のキャリアの相談や支援の経験があるのではないでしょうか。そして、自身の今後のキャリアについて考える機会も少なくないことと思います。

 以下の書籍では、本文中のシャインの理論を含め、キャリア研究の理論とキャリアカウンセリングの実践について幅広く紹介されています。

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渡辺三枝子編著『新版 キャリアの心理学〔第2版〕』(ナカニシヤ出版、2018年)