大学について考えるブログ

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大規模私立大学における合格者数の抑制について

 前回に続き入試の話題です。

 ここ数年の大学入試では、大都市の大規模私立大学を中心に合格者数を抑制する動きが強まった影響で各所に混乱が生じていることが新聞等のニュースで採りあげられています。模試判定の確実性の低下、受験生の安全志向による中堅大学の入学難易度の上昇、歩留り率の予測の難しさによる追加合格の頻発、浪人生の増加などです。

 このような事態のきっかけとなった文部科学省の通知があります。以下の2つの通知です。

*平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)
 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1360007.htm

*大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準の一部を改正する告示の施行について(通知)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1362708.htm

 

 1つ目の通知は、例えば収容定員8000人以上の大規模大学なら入学定員超過率が1.10倍以上になると私立大学等経常費補助金が全額不交付になるというように(0.95~1.00倍だと補助金が上乗せ)、学生数を収容定員に基づいて適正に管理することを求めています。

 2つ目の通知も定員管理の適正化を要請するもので、公立、私立大学等に対し、新学部等の設置の審査に関して、例えば収容定員4000人以上の大学で入学定員300人以上の学部の場合、平均入学定員超過率(修業年限4年であれば過去4年間の平均)が1.05倍未満であることが条件になっています。改組による新学部の設置を予定する学部が、帳尻を合わせるために4年目に極端に合格者数を減らすこということも実際に起こっているようです。

 2つの通知を総合すると、大規模私立大学では、毎年の入学者数を定員の1.10倍未満とし(0.95~1.00倍が理想)、〔学部の新設を想定した場合〕4年間の平均で1.05倍未満に抑えることが必要であり、さらにこれを学部ごとに運用しなければなりません。

 熟練した入試担当職員でも歩留まり率を正確に予測して合格者数を算出することは容易ではなく、まして入学者が一定数をオーバーするとペナルティが課されるため、大学側は安全策(合格者数の抑制)を選択することになります。

 

 また、これとは別に、東京23区内の大学の定員増を原則として認めないという政策がとられていることは、以前書いたとおりです。