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学納金返還請求訴訟について

 前回、学生納付金(学納金)について言及し、学納金は基本的に返還されないことになっていると説明しました。もっとも、入学前の段階では幾分事情が異なります。

 学納金の返還をめぐって大きな転機となったのが、学納金返還請求訴訟に関する平成18年(2006年)の最高裁判所判決です。

 

 通常、受験生が入学試験に合格し、その大学への入学を希望すると、入学前に入学金や授業料(半年分もしくは1年分)等の学納金を納めます。従前は、入学を辞退しても支払った学納金は返還されないものでした。

 しかし、上記の最高裁判決では、入学の意思の撤回があれば(原則3月31日まで)、大学は入学金以外の学納金(授業料等)を全額返還しなければならないとされました。この判決には、平成13年(2001年)の消費者契約法施行の影響があったとされています。

 入学金が返還されないのは、入学金が入学手続きの手数料や入学できる地位獲得の契約金と解釈されたためです。授業料等の学納金は、教育サービス(授業、施設利用等)全体に対する対価であり、入学辞退によって大学は損害を受けず、授業料等は返還しなければならないと判断されました。

 

 なお、この判決は、いわゆる在学契約という考え方が広く知られる契機になったとされています。