大学について考えるブログ

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秋入学について(臨教審での議論)

 新型コロナウイルス感染症の影響で、小・中・高等学校の休校が長引くなか、にわかに9月(秋)入学の議論が起こっているようです。

 ご存知(ご記憶)の方も多いと思いますが、秋入学の検討は、その時々で発端となる出来事は異なりますが、歴史的に何度も繰り返されてきたことではあります。そのなかでも臨時教育審議会(1984-1987)による検討や提言は有名です。

 

 臨時教育審議会(臨教審)の第四次答申(昭和62年8月)では、①より合理的な学年暦への移行と学校運営上の利点の視点(学年の終わりに夏休みとするカリキュラム上および運営上のメリット)、②国際的に開かれた教育システムの視点、③生涯学習体系への移行の視点(学校とは別の教育機会の活用や学校の役割の見直し)の3点から秋入学の意義を説明し、その移行に向けて、諸条件の整備に努めるよう提言しています(ただし、直ちに秋入学へ移行することには慎重)。

 答申でも移行方式は検討されていますが、秋季入学研究会(代表:沖原豊)による『秋季入学に関する研究調査(昭和61年12月)』に詳しく説明されています。ここでは、移行方式(学年進行による移行方式(1.5倍入学(半年繰り下げ・繰り下げ入学)、新入生漸次受入方式、半年入学待機方式)、一斉移行による移行方式(教育期間短縮方式、半年入学待機、卒業・修了延期方式))の検討に加え、移行経費も算出してあり、秋入学への移行の経費は、最大で1兆8千億円(当時)と見積もられています。
 上記の研究調査は、臨時教育審議会編集『秋季入学に関する研究(秋季入学研究会報告書)』(第一法規、1987)として出版されています。因みに、目次は以下のとおりです。目次から秋入学移行の課題が垣間見えるように感じます。

 第1章 入学時期の変遷状況
 第2章 国民の学校暦観・季節観
 第3章 児童・生徒等の心身への影響
 第4章 学校の年間教育計画との関係
 第5章 夏休みの位置づけ
 第6章 入試との関係
 第7章 会計年度と学年度
 第8章 国際交流上の利点と問題点
 第9章 学生の就職、教員の人事異動・研修
 第10章 移行方法
 第11章 移行経費
 第12章 諸外国の学年始期の現状
 第13章 諸外国の学年始期の設定理由
 第14章 諸外国の学年始期変更の実際