大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

第1回大学入学共通テストについて

 この1月、初めての大学入学共通テストが実施されました。

 大学入試センター試験に代わる新テストの導入は、平成26年(2014年)の中央教育審議会答申『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』において提言されていました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1354191.htm

 

 この答申のなかで、新テストは「大学入学希望者学力評価テスト」と仮称され、その在り方として、主に以下のような点が挙げられていました(詳細は答申の15、16ページを確認してください)。

*思考力・判断力・表現力を中心に評価する。
*「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題する。
*記述式を導入する。
*年複数回実施する。
*大学及び大学入学希望者に対して、段階別表示による成績提供を行う。
*CBT方式での実施を前提に、出題・解答方式の開発や、実施回数の検討等を行う。
*英語については、四技能を総合的に評価できる問題の出題や民間の資格・検定試験の活用により、バランスよく評価する。

 これらの内容が先日の第1回目の共通テストで実現されたかどうか、その結果はみなさんのよく知るとおりかと思います。

 

  大学入学共通テストの目的は、それが提言された答申のタイトルが示すように、高校教育から大学入試を経て大学教育に至る一連の高大接続改革にあります。しかし、高大接続改革に占める共通テストの比重があまりにも大きすぎるとの指摘も頻繁に聞かれるとことです。

 高大接続の劇的な改革というよりは、以下の書籍のように具体的なテーマと教育の現場(教室)から高大接続に取り組む動きもあります。

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渡辺哲司他『あらためて、ラインティングの高大接続』(ひつじ書房、2021年)

 

次年度(令和3年度)の文部科学関係予算案について

 令和3年度(2021年度)の文部科学関係の予算案がウェブページに公開されています。

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00002.htm

 

 それによると、国立大学の運営費交付金や改革のための補助金に1兆838億円、私立大学等経常費補助に2,975億円の予算が組まれています。

高等教育関連のフォーラム(オンライン)について

 現状、所属の異なる人が集まる学会や研究会は、ほぼ全てオンラインでの開催になったと言っていいようです。今やコロナ禍においても、大学関連のイベントは延期や中止ではなく、オンライン開催が選択されるようになりました。

 例年、年度末に開催される高等教育関連のフォーラムも例外なくオンライン開催となっています。

 

・FDフォーラム(大学コンソーシアム京都)〔第26回〕
 2月20日(土)、21日(日)、27日(土)、28日(日)
 http://www.consortium.or.jp/project/fd/forum

・大学教育改革フォーラム in 東海 2021
 3月6日(土)
 https://sites.google.com/view/tokaiforum2021/

・大学教育研究フォーラム〔第27回〕
 3月17日(水)、18日(木)
 https://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/forum/2020/

・IDE高等教育研究フォーラム
 3月25日(木)
 https://ide-web.net/

「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」について

 先日、「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」から、授業を目的とする著作物利用に関するガイドラインにあたる「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」が公表されました。

https://forum.sartras.or.jp/info/005/

 

 また、それに先立ち、2021年度の授業目的公衆送信補償金等管理協会の補償金額が正式に決定されています。

メディア授業について(2)

 前回の続きで、メディア授業について補足します。

 メディア授業は、「平成13年文部科学省告示第51号(大学設置基準第25条第2項の規定に基づく大学が履修させることができる授業等)※平成24年改正」によって要件が定められています。(この告示は、メディア授業告示とも呼ばれます。)

 メディア授業は、①同時双方向型(テレビ会議方式等)と②オンデマンド型(インターネット配信方式等)に大別されます。詳細は、下記の文部科学省の資料を確認してもらえればと思いますが、面接授業に相当する教育効果が認められるよう、学生の意見交換の機会の確保等の配慮が求められています。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/09/10/1409011_6.pdf

 なお、メディア授業告示の改正については、以下のウェブページに詳細が示してあります。
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07091103/002.htm

 

 メディア授業告示は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う文部科学省からの通知等でも様々に引用されています。 

メディア授業について

 前回、「メディアを利用して行う授業(メディア授業)」について少し触れましたが、メディア授業は新型コロナ感染症の影響でにわかに注目を集めることになりました。

 そもそも、その名称は大学通信教育設置基準において、大学設置基準第二十五条第二項の方法による授業を「メディアを利用して行う授業」としたことで、通常、メディア授業と呼ばれるようになりました。

大学設置基準第二十五条第二項

 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。

 

 メディア授業が大学設置基準に登場したのは平成10年(1998年)のことです。ICT(情報通信技術)の進展に伴う措置であることは言うまでもありません。

 

 卒業要件の単位数のうち、メディア授業により修得する単位数は60単位を超えないものとされていること(大学設置基準第32条第5項)は、周知のことかと思います。

 ただし、今回の臨時的・特例的な措置による面接授業以外の授業は、大学設置基準第25条第2項の規定による授業ではないと解釈され、第32条第5項の規定は適用されないため、上記の60単位の上限に算入しなくともよいとされています。(文部科学省「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&Aの送付について(令和 2年4月21日)」)

 

対面授業と面接授業について

 このところ、遠隔(オンライン)授業の対して、対面授業または面接授業という言葉をよく聞くようになりました。同時に、対面授業と面接授業の違い、もしくはどちら正しいのかという疑問をよく耳にします。

 法令用語としては、面接授業を用い、以下のとおり大学通信教育設置基準にその根拠があります。

大学通信教育設置基準

(授業の方法等)
第三条 授業は、印刷教材その他これに準ずる教材を送付若しくは指定し、主としてこれにより学修させる授業(以下「印刷教材等による授業」という。)、主として放送その他これに準ずるものの視聴により学修させる授業(以下「放送授業」という。)、大学設置基準第二十五条第一項の方法による授業(以下「面接授業」という。)若しくは同条第二項の方法による授業(以下「メディアを利用して行う授業」という。)のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。

大学設置基準

(授業の方法)
第二十五条 授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
2 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。

 

 つまり、大学のおける通常の授業(大学設置基準第二十五条第一項の方法による授業)は面接授業と言えます。文部科学省からの通知(例えば「大学等における新型コロナウイルス感染症への対応ガイドラインについて(周知)」(令和2年6月5日))でも「学生が通学する形で行われる対面での授業(以下「面接授業」という。)」という文言があり、面接授業が公的な表現と言えるでしょう。放送大学でも面接授業(スクーリング)を使用しています。

 もっとも、対面授業が間違いということではなく、広く使用されるものです。対面授業と面接授業が別のものであるとか、異なる側面があるとかいうことはないようです。法令上は面接授業を用いるということは確かですが、面接授業という言葉は世間に浸透しているものではなく、一般的には対面授業も多く使われます。

 

 大学通信教育設置基準と大学設置基準を合わせて解釈すると、授業には、①印刷教材等による授業 ②放送授業 ③面接授業 ④メディアを利用して行う授業 の4つがあり、通信制の大学ではその全てのなかからどれか(もしくは併用)、一般の大学では通常は③の面接授業が実施される(④も可)と理解できます。

 

『大学設置審査評価法令集』について

 大学の事務室には、大学関連の法令集『大学設置審査要覧』が備えてあり、職員は必要に応じて確認できる状態になっていたかと思います。しかし、『大学設置審査要覧』を手掛けていた文教協会が、平成29年(2017年)に解散して以降、その刊行は平成28年度版を最後にストップしていました。

 今回、その後継として、地域科学研究会高等教育情報センター(KKJ)から『大学設置審査評価法令集』が出版されました。

http://chiikikagaku-k.co.jp/kkj/

 

 『大学設置審査要覧』を、その別冊『大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き』とともに熟読した職員も多いと思います。今回は4年ぶりの出版ということもあり、部署ごとにかなりの部数購入する大学もあるのではないでしょうか。

 

 

  本文中に紹介した書籍です。今回は、横書きになり、サイズも一回り大きくなっています。

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高等教育質保証研究会(編)『大学設置審査要覧[2020年10月版]』(地域科学研究会高等教育情報センター、2020年)