大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

高等教育学会について

 高等教育研究に関する主な学会には、大学教育学会以外にも、平成9年(1997年)に設立された日本高等教育学会があります。
http://www.gakkai.ne.jp/jaher/

 12月中旬には、以下のとおり、研究交流集会が開催されます。

・高等教育学会〔2017年度課題研究集会〕
 12月17日(日)筑波大学/東京キャンパス文教校舎
 http://rihe.hiroshima-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/7604381553f3bc3bb37293256f3485f9-2.pdf

 例年、高等教育学会の催しは、5月下旬~6月頃に大会が、12月頃に研究交流集会が開かれています。因みに、来年の大会(第21回)は、6月2日(土)、3日(日)に桜美林大学で開催されることになっています。

 

 高等教育学会の紀要『高等教育研究』は、玉川大学出版部から市販されており、会員以外にも入手しやすくなっています。以下は、スタッフ・ディベロップメント(SD)の特集号です。

f:id:mohtsu:20171111123832j:plain

『スタッフ・ディベロップメント(『高等教育研究』第13集)』(日本高等教育学会編、2010年)

大学の授業料について

 10月27日開催の第2回「人生100年時代構想会議」(首相官邸)での議論が新聞等でも大きく採り上げられているように、昨今、俄かに高等教育の無償化や負担軽減の議論が活発になっています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai2/siryou.html

 

 しかし、そもそも、大学の授業料はどのような根拠によって決まっているのでしょうか。
 広島大学の丸山氏の調査によると、私立大学の授業料の設定に係る要因を明確に説明するのは困難であるとして、「私立大学は、学生の教育、教員の研究にどのくらいの経費がかかり、大学の管理運営にいくらかかるかを計算して、授業料を設定するのではなく、国立大学を含めて他大学の授業料水準を見ながら、自らの水準を決定すると考えてもそれほど間違いではないだろう。」(『大学の財政と経営』117ページ)と述べています。

 

 本文中で引用した書籍です。2001年以降の著者の論文や講演録をまとめてあります。

f:id:mohtsu:20171109205603j:plain

 丸山文裕『大学の財政と経営』(東信堂、2009年)


 米国の大学経営に関わる理事と財務担当者向けに財務運営の基本的な考え方を解説してあり、授業料の設定についてもふれられています。

f:id:mohtsu:20171109205634j:plain

ウィリアム・リード『財務からみた大学経営入門』(東洋経済新報社、2003年(原著2001年))

 

大学のキャンパスについて

 この9月、日本学術会議から、「我が国の大学等キャンパスデザインとその整備システムの改善にむけて(提言)」(平成29年9月29日)が公表されました。キャンパスデザイン及びキャンパス整備にあたっての組織・システムの課題を指摘し、その改善方策が提言されています。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t252-1.pdf

 美しく、機能的なキャンパスは大学の魅力の重要な部分です。しかし、日本の大学でキャンパス作りに成功していると評価される大学はそう多くはないように思います。空いた土地に脈絡なく建物を建てていったとしか思えないキャンパスも数多くみられるのではないでしょうか。

 

 米国のケネディ大統領は、アメリカン大学の卒業式での講演(1963年)のなかで、メイスフィールド(1878-1967、英国の詩人)を引用し、大学のキャンパスの"美しさ"を話題にしました。関心のある方は、以下のURLをご覧ください。https://www.jfklibrary.org/JFK/Historic-Speeches/Multilingual-American-University-Commencement-Address/Multilingual-American-University-Commencement-Address-in-Japanese.aspx

 

 多くの大学(高等教育機関)で、キャンパスは戦前から戦後に引き継がれ、現在のキャンパスの母体となっています。以下の書籍では、明治期の大学キャンパスの成立過程を丹念に追ってあります。

 f:id:mohtsu:20171101210458j:plain

宮本雅明『日本の大学キャンパス成立史』(九州大学出版会、1989年)

大学教育学会について

 大学教育を研究対象とする者、または広く大学教育に関わる者が集う学会に大学教育学会があります。最近では教員だけではなく、職員の会員も増えているようです。
 12月初旬には、以下のとおり、課題研究集会が開催されます。

・大学教育学会〔2017年度課題研究集会〕
 12月2日(土)、3日(日)関西国際大学/尼崎キャンパス
 http://daigakukyoiku-gakkai.org/site/conference/conferenceinfo/

 

 例年、大学教育学会の催しは、5月下旬~6月上旬に大会が、11月下旬~12月上旬に課題研究集会が開かれています。因みに、来年の大会(第39回)は、6月9日(土)、10日(日)に筑波大学で開催されることになっています。


 大学教育学会は、1979年(昭和54年)「一般教育学会」として発足し、1997年(平成9年)「大学教育学会」に名称変更されています。この経緯からも分かるように、かつては一般教育担当(教養部)教員の会員も多かったと聞いています。

 1991年(平成3年)の大学設置基準の「大綱化」以降、多くの大学で教養部は学部等に改組され(新学部へ移行、解体後に既存学部へ吸収、独立大学院の設置など)、それと同時に大学教育(共通教育)関係のセンターを設置した大学もありました(このようなセンターが、後にFDに関する学内拠点の役割を担うケースも多く生じました)。1996年(平成8年)には、全国大学教育研究センター等協議会(現在の会員は国立大学を中心に36機関)が発足しています。

 

 以下の冊子は、1995~1998年に実施された国立七大学(旧帝大)の元教養部長等による研究会の報告書です。各大学の一般教育を中心とした教育改革の歴史や総括から成っています。

f:id:mohtsu:20171027205510j:plain
大学教育改革研究会・九州大学大学教育研究センター『大学改革の到達点にたって -国立七大学教養(学)部の総括』(1999年)

 

教職員のモチベーションについて

 先日、学生のメンタルヘルスについて書きましたが、教職員のメンタルヘルスの問題も無視できないのが今日の大学の実情だと思います。モチベーションの問題と言い換えることもできるかもしれません。

 

 米国の心理学者ハーズバーグ(1923-2000)は、仕事において「満足」に関わる要因(動機づけ要因 Motivator factor)と「不満」に関わる要因(衛生要因 Hygiene factor)は別物であることを示しました(「二要因理論(動機づけ-衛生理論)」)。
 動機づけ要因により、満足感を高め、モチベーションを向上させることができる一方、衛生要因に対処することで不満は解消されるとしても、満足感やモチベーションを高めるとは限らないとされています。
 動機づけ要因として、仕事の達成感、周囲からの承認、責任範囲の拡大、能力向上や自己成長などが、衛生要因として、組織の方針、管理方法、労働環境、作業条件(給与、労働時間、身分)などが挙げられています。

 この二要因理論に依れば、大学の運営方針が曖昧だと教職員の不満は増大しますが、大学の運営方針が明確になったからといって(不満は解消されたとしても)教職員のモチベーションが高まるわけではありません。モチベーションを高めるためには、達成感や自分が成長したと感じられる仕事の内容そのものにあると言えるでしょう。

 

 以下は、ハーズバーグの論考のほか、モチベーションに関する多くの論文を集めた書籍です。

f:id:mohtsu:20171027204022j:plain

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部編・訳『動機づける力-モチベーションの理論と実践〔新版〕』(ダイヤモンド社、2009年)

 二要因理論に関して深く理解したい人のためには、ハーズバーグの主著『作業動機の心理学』(日本安全衛生協会、1966年(原著1959年))、『仕事と人間性』(東洋経済新報社、1968年(原著1966年))などがあります。

大学のリスク(危機管理)について

 今月、文部科学省のウェブページで、冊子『リスクコミュニケーション案内』が公開されました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/suishin/detail/1397354.htm


 大学に関わるリスクには、自然災害、感染症、重大な事件や事故などが挙げられますが、既に多くの大学が危機管理マニュアルを作成したり、安否確認システムを整備したりと、基本的なリスク管理の体制を整えているようです。

 リスク管理に関する業務は、大学職員に課された新たな役割として急速に注目が高まっている領域であると言えると思います。

 

 偶然というものを意味のある概念にする確率論が、その応用領域を広げていった過程を、学際的アプローチで迫る意欲的な研究書です。

f:id:mohtsu:20171027202745j:plain

R.クリューガー、L.ダーストン、M.ハイデルベルガー編著『確率革命-社会認識と確率』(梓出版社、1991年(原著1987年))

大学の広報について

 現在、大学の動向や高等教育政策に関する情報源となる多くの雑誌がありますが、そのなかにはウェブ上で閲覧できるものがあります。例えば、以下のようなものです。
*『大学時報』(日本私立大学連盟、隔月刊、1952~)
 http://daigakujihou.shidairen.or.jp/
*『カレッジマネジメント』(リクルート、隔月刊、1983~)
 http://souken.shingakunet.com/college_m/
*『Between』(進研アド、隔月刊、1987~)
 http://between.shinken-ad.co.jp/between/


 『Between』の最新号(2017年9-10月号)で、個人的に印象に残ったのが、コラムのなかでの「広報は”宣伝”ではなく、ステークホルダーとのコミュニケーションである(12ページ)」という一文でした。

 昨今、私立大学に限らず、国公立大学も含め、ほとんど全ての大学が広報活動に注力していると言っていいと思います。しかし、目指す大学像、広報の目的、ターゲット(ステークホルダー)などの広報戦略が明確で、しかも、それらが学内で共有されている大学はそう多くないように感じます。

 

 以下の書籍は、大学の広報に焦点を当てたものではありませんが、長期にわたって戦略的に大学改革を行った大学(イーロン大学(米国ノースカロライナ州))の事例です。学生募集にも苦慮していた大学が、美しいキャンパスをもつ中規模の優良大学に変貌を遂げた経過を追ってあります。また、米国の高等教育が、どのように成り立っているのかを理解するのにも役立ちます。

f:id:mohtsu:20171026210450j:plain
ジョージ・ケラー『無名大学を優良大学にする力-ある大学の変革物語』(学文社、2013年(原著2004年))

 

研究評価について

 昨日、研究不正についてふれましたが、研究者の不正行為の背景、もしくは直接的な要因として、研究評価の仕組みや在り方の課題があげられることがあります。


 本年4月、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(文部科学大臣決定)の改定がありました。 今回の改定は、第5期科学技術基本計画を踏まえた「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の改定(平成28年12月)を受けたものです。
 この評価指針は、研究開発プログラムや研究開発機関が主な対象になっています。国立大学においては、国立大学法人法の前提はありますが、この評価指針を参考に法人評価が実施されることになります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/hyouka/main11_a4.htm

 
 研究評価の場面で盛んに言及される用語に「インパクト・ファクター」があります。これは、掲載されている論文の引用数をもとに雑誌の影響度を測る指標で、トムソン・ロイター社(旧ISI:Institute for Scientific Information)の引用文献データベース「Web of Science」から算出されます。

 インパクト・ファクターは、購入雑誌の選定資料などに用いるのが本来の利用法で、研究者個人の業績評価に流用するのは問題が多いとされています(考案者のガーフィールド自身も指摘しています)。

 

 そもそも研究評価には、どのような方法、方式があるのでしょうか。以下の書籍では、単純な数字では表現できないことが多いことを前提としつつ、数々の指標の有用性や課題を検討してあります。

f:id:mohtsu:20171023003442j:plain

根岸正光、山崎茂明編著『研究評価 -研究者・研究機関・大学におけるガイドライン』(丸善、2001年)