大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

『大学設置審査評価法令集』について

 大学の事務室には、大学関連の法令集『大学設置審査要覧』が備えてあり、職員は必要に応じて確認できる状態になっていたかと思います。しかし、『大学設置審査要覧』を手掛けていた文教協会が、平成29年(2017年)に解散して以降、その刊行は平成28年度版を最後にストップしていました。

 今回、その後継として、地域科学研究会高等教育情報センター(KKJ)から『大学設置審査評価法令集』が出版されました。

http://chiikikagaku-k.co.jp/kkj/

 

 『大学設置審査要覧』を、その別冊『大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き』とともに熟読した職員も多いと思います。今回は4年ぶりの出版ということもあり、部署ごとにかなりの部数購入する大学もあるのではないでしょうか。

 

 

  本文中に紹介した書籍です。今回は、横書きになり、サイズも一回り大きくなっています。

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高等教育質保証研究会(編)『大学設置審査要覧[2020年10月版]』(地域科学研究会高等教育情報センター、2020年)

プレFD(PFFP)について

 旧聞に属する話かもしれませんが、昨年の大学院設置基準の改正で、博士後期課程の学生への、いわゆるプレFDの実施(情報提供)が努力義務となりました。

https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1420657.htm

 

 具体的には、以下の条文が加わりました。

(学識を教授するために必要な能力を培うための機会等)
第四十二条の二 大学院は、博士課程(前期及び後期の課程に区分する博士課程における前期の課程を除く。)の学生が修了後自らが有する学識を教授するために必要な能力を培うための機会を設けること又は当該機会に関する情報の提供を行うことに努めるものとする。

 

 プレFDはPFFP(Preparing Future Faculty Program)とも呼ばれ、大学教員を目指す大学院生を対象にした、特に教育に関する能力開発を指しています。現在では、旧帝大をはじめとした、大学院生の多い研究大学を中心に実施されています。

 大学教員の養成は研究室単位での活動に過度に依存していると言われていました。その反省から大学が組織的に大学教員としての能力を育成することが求められているという背景があるようです。

 

 平成20年(2008年)の中央教育審議会答申『学士課程教育の構築に向けて』において、「教育研究上の目的に応じて、大学院における大学教員養成機能(プレFD)の強化を図る」との言及がありました。その頃から、いくつかの大学で先行的な取組が行われていました。

 以下の書籍は、名古屋大学の大学教員準備プログラム(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/service/grad/)の成果をまとめたテキストです。

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夏目達也、近田政博、中井俊樹、齋藤芳子『大学教員準備講座』(玉川大学出版部、2010年)

国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議について

 前回に続いて国立大学の話題です。

 今年に入り、国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議が文部科学省に設置され、月に1回のペースで会議が行われています。先日、その中間とりまとめが公開されました。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/105/index.htm

 平成16年(2004年)の国立大学の法人化に当たって、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議によって出された『新しい「国立大学法人」像について(平成14年3月26日)と読み比べると、この間の考え方の変化が分かると思います。

 

  今回の中間まとめで、国立大学法人と国との関係(自律的契約関係)の再定義について言及されています。
 国立大学にとって、国(文部科学省)との関係が最も重要であると考える関係者は多いと思います。それは、職員人事において顕著かもしれません。以下の書籍は、外からは見えにくい国立大学の職員人事を採りあげています。

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渡辺恵子『国立大学職員の人事システム』(東信堂、2018年)

指定国立大学法人の追加指定について(4)

 昨日、第4期中期目標期間における指定国立大学法人の追加指定について文部科学省から発表があり、あらたに筑波大学東京医科歯科大学が指定を受けました。これで、第3期中期目標期間に指定された7大学(東北、東京、東京工業、一橋、名古屋、京都、大阪)と合わせて、指定国立大学法人は9大学になりました。

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00343.html

 

「教育と研究の充実に資する大学運営業務の効率化と教職協働の実態調査」について

 以前、教職協働に関する大学設置基準の改正について書きましたが、文部科学省から「教育と研究の充実に資する大学運営業務の効率化と教職協働の実態調査(令和2年3月)」の結果が公表されています。

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1418370_00008.htm

 このなかの教職協働に関する部分では、「教員がより関わることで効率的になる業務」、「職員がより関わることで効率的になる業務」などに関して、アンケートに協力した職員から寄せれれた様々な意見(自由記述)が掲載されています。

 

 上記の調査以前に、「大学等における「教職協働」の先進的事例に係る調査」(平成30年3月)も公開されています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1403495.htm

 

次年度の授業目的公衆送信補償金について

  4月に授業目的公衆送信補償金制度について書きましたが、このほど、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)から、2021年度の補償金の額が公表されました。申請が許可されれば、学生1人当たりの補償金は720円(年間)となります。8000人規模の大学では、年間576万年の補償金が必要となる計算です。

https://sartras.or.jp/ninkashinsei/

 

新学習指導要領(「論理国語」と「文学国語」)について

 先月、山崎正和大阪大学元教授が亡くなりました。劇作家、評論家として有名ですが、大学の学長や中央教育審議会の会長(平成19年(2007年)から2年間)を務めるなど教育行政に関わった人物でもありました。また、その著作が大学の入試問題にたびたび使用されることでも有名でした。

 大学入試(現代文)に評論が頻出する人物として一般的によく名前が挙がるのは、小林秀雄(1902-1983)、加藤周一(1919-2008)、外山滋比古(1923-2020)、中村雄二郎(1925-2017)、河合隼雄(1928-2007)、山崎正和(1934-2020)、養老孟司(1937-)、鷲田清一(1949-)、内田樹(1950-)のような作家でしょうか(あくまで個人的な印象でピックアップしたもので、データの根拠はありません)。

 

 令和4年度から適用される学習指導要領(平成30年改訂)では、高等学校の国語の選択科目が、従来の国語表現、現代文A、現代文B、古典A、古典Bから、論理国語、文学国語、国語表現、古典探求に変更されることが話題になりました。「論理国語」と「文学国語」という分類に対し各界から議論が起こったようです。

*平成30年改訂の高等学校学習指導要領に関するQ&A(国語に関すること)
 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/qa/1422366.htm

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語ワーキンググループ配付資料(平成28年2月19日)
 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/068/siryo/1369033.htm

 

 新学習指導要領によって、国語の入試問題の傾向が変われば、上に挙げたような頻出著者の動向も大きく変わってくるかもしれません。

 

 この機会に、山崎正和の教養に関する評論『「教養の危機」を超えてー知の市場化にどう対処するかー(『This is 読売』1999年3月)』を読み返してみました。現在、この文章は以下の書籍におさめられています。

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山崎正和『歴史の真実と政治の正義』(中公文庫、2007年)

学術振興会の特別研究員について

 前回、学術振興会(学振)について書きましたが、研究者にとっての学振は、まず科研費を中心とする競争的資金を連想させると思います。一方、 大学院生にとっての学振とは特別研究員のことを指していると言ってもいいと思います。

 

 学振の特別研究員とは、博士(後期)課程の大学院生もしくは博士課程修了者に対して、研究奨励費(生活費)と研究費を支給するもので、研究に専念できる環境を整え、優れた研究者を養成することを目的とした制度です。その主な種類には、博士後期課程の大学院生を対象としたDC1(進学前に申請し3年間採用)およびDC2(進学後に申請し2年間採用)、博士課程修了者を対象としたPD(3年間採用)などがあります。学振の特別研究員に採用されると、その後の研究者ポストの獲得に有利にはたらくと考えられています。

https://www.jsps.go.jp/j-pd/index.html

 因みに本年度の採択状況は、DC1が720人(採択率19.4%)、DC2が1094人(同19.3%)、PDが363人(同19.6%)となっており、なかりの難関と言えます。

 

 現在の特別研究員の制度は昭和60年(1985年)に始まったものですが、それ以前にも奨励研究員(昭和34年)、特定領域奨励研究員(昭和50年)、大学院博士課程奨励研究員(昭和51年)などの制度の整備が徐々に進んでいました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318486.htm