大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

夏の学会(8~9月)について

 この夏の学会(年次大会)で、大学教育に関するものをいくつか紹介します。

 学会といえば以前は研究者の集まりでしたが、近年は実務者の会員の割合が増加している学会もあります。また、記念シンポジウム等を一般に開放している学会も最近は多いようです。

 

日本教育学会〔第78回大会〕
 8月5日(月)~8日(木)学習院大学(5日のみ東京大学
 http://www.jera78.jp/

・日本カウンセリング学会〔第52回大会〕
 8月18日(日)、19日(月)北海学園大学
 http://jacs52.jp/

・大学評価・IR担当者集会〔第13回〕(大学評価コンソーシアム)
 8月22日(木)、23日(金)神戸大学/六甲台第1キャンパス
 http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=target155

・日本科学教育学会〔第43回年会〕
 8月23日(金)~25日(日)宇都宮大学/峰キャンパス
 http://www.jsse.jp/jsseam/modules/note5/

・高等教育質保証学会〔第9回大会〕
 8月24日(土)、25(日)國學院大學/渋谷キャンパス
   http://jaquahe.org/03news_pro.html

・日本リメディアル教育学会〔第15回全国大会・総会〕
 8月26日(月)~28日(水)金沢工業大学/扇が丘キャンパス
 http://www.jade-web.org/conference/conference.html

・日本テスト学会〔第17回大会〕
 8月28日(水)、29日(木)名古屋大学/東山キャンパス
 http://plaza.umin.ac.jp/jart2019/

・日本インターンシップ学会〔第20回大会〕
 8月31日(土)、9月1日(日)近畿大学東大阪キャンパス
 http://jsi2019kindai.net/

・日本国際バカロレア教育学会〔第4回全国大会〕
 9月1日(日)早稲田大学早稲田キャンパス
 http://jaiber.org/infomation/

初年次教育学会〔第12回大会〕
 9月6日(金)~8日(日)創価大学
 http://www.jafye.org/conf/conf2019/

日本教育工学会〔第35回全国大会〕
 9月7日(土)、8日(日)名古屋国際会議場
 https://www.jset.gr.jp/taikai35/

・大学行政管理学会〔第23回定期総会・研究集会〕
 9月7日(土)、8日(日)実践女子大学/渋谷キャンパス
 http://juam.jp/wp/im/assembly/2019_23/

・教育システム情報学会〔第44回大会〕
 9月11日(水)~13日(金)静岡大学/浜松キャンパス
 https://www.jsise.org/taikai/2019/index.html

日本教社会学会〔第71回大会〕
 9月12日(木)、13日(金)大正大学
 http://www.gakkai.ne.jp/jses/conference/

・日本学習社会学会〔第16回大会〕
 9月14日(土)、15日(日)日本大学文理学部キャンパス
 http://learning-society.net/taikai.html

日本教育心理学会〔第61回総会〕
 9月14日(土)~16日(月・祝)日本大学文理学部キャンパス
 https://confit.atlas.jp/guide/event/edupsych2019/top

・教育史学会〔第63回大会〕
 9月28日(土)、29日(日)静岡大学/静岡キャンパス
 http://www.jshse63.jp/

国立大学職員の給与水準について

 有名私立大学の職員の給与が比較的高い水準にあることは、この業界では広く知られていることではないでしょうか。もっとも私立大学といっても千差万別で、私立大学という枠で給与水準を説明することは困難です。

 国立大学の場合は大学間でほとんど差はなく、また役員や教員を含めた構成員の給与はウェブ上で公開されています。関心のある方は、以下のURLをご覧ください。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/06/attach/1418442.htm

 

 大学職員の適正な給与水準をどのように考えるかの明快な解答はないと思いますが、国立大学の職員の給与水準は国家公務員のそれより低いため「適正」であると判断されることに違和感を覚える国立大学職員は少なくないかもしれません。(公立大学職員と地方公務員も同様の関係のようです。)

 

 もっとも、業務への動機づけと給与の関係が単純に比例するわけではなく、職員のモチベーションの問題は非常に複雑な要素が絡んでいるように思います。


 

大学生の不登校について

 最近、ひきこもりに関するニュースが頻繁に採り上げられています。

 大学生の不登校について公式な文書で初めて本格的にふれられたのは、平成12年(2000年)の「廣中レポート」ではなかったかと思います。

 

 大学生の不登校やひきこもりの実態把握に関する調査や統計はあまり見ることができません。小学生、中学生、高校生の場合は、公式の不登校の定義や統計がありますが、大学生の場合は、誰かが出席を管理するわけはありません。また、大学生は自身の責任で大学に通っているという考え方も強く残っています。
 それでも大学生の不登校やひきこもりに関していくつかの調査は存在し、例えば以下の研究があります。

 

*「大学生に見出されるひきこもりの精神医学的な実態把握と援助に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業『思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究』2009年)

http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=200935010B

 

 ここでの調査によると、不登校の学生は 0.7~2.9%(全国の大学生約280万人中2.0~8.1万人)、このうちアパシー状態にある学生が0.1~1.0%(約0.3~2.8万人)、ひきこもり状態にある学生が0.2~1.0%(約0.6~2.8万人)と推定されています。

大規模私立大学における合格者数の抑制について

 前回に続き入試の話題です。

 ここ数年の大学入試では、大都市の大規模私立大学を中心に合格者数を抑制する動きが強まった影響で各所に混乱が生じていることが新聞等のニュースで採りあげられています。模試判定の確実性の低下、受験生の安全志向による中堅大学の入学難易度の上昇、歩留り率の予測の難しさによる追加合格の頻発、浪人生の増加などです。

 このような事態のきっかけとなった文部科学省の通知があります。以下の2つの通知です。

*平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)
 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1360007.htm

*大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準の一部を改正する告示の施行について(通知)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1362708.htm

 

 1つ目の通知は、例えば収容定員8000人以上の大規模大学なら入学定員超過率が1.10倍以上になると私立大学等経常費補助金が全額不交付になるというように(0.95~1.00倍だと補助金が上乗せ)、学生数を収容定員に基づいて適正に管理することを求めています。

 2つ目の通知も定員管理の適正化を要請するもので、公立、私立大学等に対し、新学部等の設置の審査に関して、例えば収容定員4000人以上の大学で入学定員300人以上の学部の場合、平均入学定員超過率(修業年限4年であれば過去4年間の平均)が1.05倍未満であることが条件になっています。改組による新学部の設置を予定する学部が、帳尻を合わせるために4年目に極端に合格者数を減らすこということも実際に起こっているようです。

 2つの通知を総合すると、大規模私立大学では、毎年の入学者数を定員の1.10倍未満とし(0.95~1.00倍が理想)、〔学部の新設を想定した場合〕4年間の平均で1.05倍未満に抑えることが必要であり、さらにこれを学部ごとに運用しなければなりません。

 熟練した入試担当職員でも歩留まり率を正確に予測して合格者数を算出することは容易ではなく、まして入学者が一定数をオーバーするとペナルティが課されるため、大学側は安全策(合格者数の抑制)を選択することになります。

 

 また、これとは別に、東京23区内の大学の定員増を原則として認めないという政策がとられていることは、以前書いたとおりです。

国立大学における英語資格・検定試験の入試での活用予定について

 国立大学の一般選抜(2021年度入学者選抜)における英語資格・検定試験の成績情報の活用状況(予定)が公表されています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1417592.htm

 

 それによると、出願資格としてのみ活用するか、点数化して加点するかが大学数において拮抗しているようです。

 

学芸員養成課程について

 先月、このブログで大学博物館について書きましたが、博物館に専門的職員として配置されるのが学芸員であり、その学芸員の資格(国家資格)は主に大学の学芸員養成課程を経ることで取得できます。

 現在、学芸員養成課程をもつ大学は295校、短期大学は8校となっています。

学芸員について(文化庁)  http://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/about/index.html

 

 平成24年(2012年)4月、大学等における学芸員養成課程の科目が改訂され(博物館法施行規則の一部改正)、新たに「博物館資料保存論」、「博物館展示論」、「博物館教育論」が必修科目として加わりました。

 

学校教育法等の一部を改正する法律について

 現在開催中の国会で、5月10日に「大学等における修学の支援に関する法律」、いわゆる大学無償化に関わる法律が成立したのに続き、大学に関するもう一つの法律「学校教育法等の一部を改正する法律」が5月17日に成立しました。

*大学等における修学の支援に関する法律案
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1413436.htm

*学校教育法等の一部を改正する法律案
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1413437.htm

 

 学校教育法とあるように、今回は、学校教育法、国立大学法人法私立学校法等が一度に改正されました。

 今回の改正の主な内容は、認証評価で適合認定を受けられなかった大学に文部科学大臣が資料の提出を求められるようにする、1つの国立大学法人が複数の国立大学を運営できるようにする(具体的には名古屋大学岐阜大学)、大学を設置する学校法人は役員の職務や責任に関する規定の整備が必要になるなどがあります。

 

 

 

 

ファシリティ マネジメントについて

  日本私立大学連盟『大学時報(隔月刊)』の3月号(No.385)の特集は、「『進化するキャンパス』」でした。『大学時報』No.378(2018年1月)では「大学の緑地管理」の小特集が組まれるなど、立地も含め、魅力あるキャンパス作りは、特に私立大学にとって大きなテーマとなっています。

 

 大学のファシリティ(施設と環境)は、教育・研究の基盤を支えるとともに、大学経営の根幹の一つでもあります。

 最近では「キャンパス ファシリティ マネジメント」という言葉もよく聞かれるようになりました。

 

  ファシリティ マネジメントは米国で誕生した経営手法ですが、2000年代以降、日本でも少しずつキャンパス ファシリティ マネジメントに関する書籍が出版されるようになってきました。

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大学行政管理学会ファシリティマネジメント研究会編『キャンパス再生のすすめ ーこれだけは知っておきたいキャンパスFM』(学校経理研究会、2010年)