大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

大学の創立年について

 昨今、多くの大学で創立何周年の記念事業が行われているように感じます。大学のアイデンティティ意識の向上、そして寄付金事業の推進という2つの目的があるのではないでしょうか。

 

 それにしても創立何周年というとき、その起点、つまり創立年(創立記念日)をいつにするかは、各大学の判断で多様な考えがあるようです。大学創設に関する法令(勅令)の公布年(日)もしくは施行年(日)をとる大学が多いとは思いますが、公布をとるか施行をとるかで創立年に1年差が生じる場合もあります。前身となる学校(大学)の開設に遡るケースもあります。札幌農学校の開設日(明治9年8月14日)を開学記念日としている北海道大学などです。

 21世紀に入って統合を行った国立大学のなかには、統合した年を新たな創立年とする大学もあるようです。これは、どちらかの大学がもう一方に吸収されたとみなされないようにする配慮かと思われます。

 

 因みに大学ポートレートでは、設立年は設置認可年とされており、法令の公布年という解釈になるのでしょうか。それも現行法令のもとでとなると、旧帝大をはじめとする、いわゆる旧制大学も、その多くは昭和24年(1949年)を設立年とするのが「正しい」のかもしれません。

 もっとも、大学の創立年を定める公式な見解などなく、共通のルールで大学の創立年を定めることは難しいでしょう。それは、大学に関する制度の変遷、各大学の沿革などの要素が関係し、また、各大学が自身の起源(前身校)をどのように考え建学の理念を捉えるかにも影響するからです。

 

  以下の書籍では、大学の制度の歴史だけではなく、多くの個別の大学のルーツを解説してあります。

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高橋誠『日本の大学の系譜』(ジアース教育新社、2015年)