大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

学校教育法の改正(大学への編入学)について

 学校教育法の改正に伴い、平成28年4月から、高等学校の専攻科の修了者が大学に編入学することが可能になりました。
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1370599.htm
 
 これにより、大学への編入学は、短期大学、高等専門学校、専門学校(専修学校)、高等学校(中等教育学校、特別支援学校の高等部)の専攻科の卒業/修了者に認められたことになります。
 専攻科をもつ高等学校は、看護等の職業学科(専門高校)に多く、同様の専門をもつ大学で編入学の需要が見込まれています。
 
 

 大学の年次途中への入学は、編入学以外にも転学(他大学からの学生の異動)や再入学があります。学生にとっては進路の選択肢が増えることになりますが、大学にとっては、それに対応したカリキュラムの整備が必要になるのはもちろん、滞りなく教務の業務を遂行する必要性が生じます。
 教務の実践に役立つ本として、以下の本を紹介します。

f:id:mohtsu:20170722205421j:plain

中井俊樹・上西浩司編『大学の教務 Q&A』(玉川大学出版部、2012年)

 
 戦後、日本の高等教育機関は四年制大学に一元化され、また、学校体系は単線型になったとされますが、現在では、大学の編入学の制度が拡大され、また、高等専門学校の専攻科から大学院への進学が認められるなど、細部においては複雑化しています。
 複線型の学校体系を改革した戦後の学制改革において、大学の制度改革、教育改革がどのようなものであったかを知るには以下のような本があります。

f:id:mohtsu:20170722204732j:plain

土持ゲーリー法一『戦後日本の高等教育改革政策 「教養教育」の構築』(玉川大学出版部、2006年)

FD/SDのネットワークについて

 米国において、FD(SD)の専門家の団体POD(The Professional and Organizational Development Network in Higher Education)が設立されたのは、1976年でした。英国のSEDA(Staff and Educational Development Association)は、1993年から活動を開始しています(SCEDとSRHEが統合され誕生)。それぞれ大規模な年次大会が開かれ、技能の向上のための議論や情報交換が行われているようです。

*POD http://podnetwork.org/
*SEDA https://www.seda.ac.uk/

 

 日本に目を向けると、FD/SDの専門職集団が形成されている状況にはありませんが、大学設置基準においてFDが義務化された平成20年(2008年)の前後に、FD関係のネットワーク、協会等が相次いで設立されました。

 全国規模のネットワークとしては、国立教育政策研究所の研究活動を元に誕生した日本高等教育開発協会(JAED、平成21年 (2009年)設立)、36の私立大学が加盟する日本私立大学FD連携フォーラム(JPFF、平成20年 (2008年)設立)などがあります。

*JAED https://www.jaedweb.org/
*JPFF http://www.fd-forum.org/fd-forum/

 

 地域のネットワークの代表的な例として、四国地区大学教職員能力開発ネットワーク(SPOD)を紹介したいと思います。SPODは、平成20年(2008年)に設立され、四国4県の32の国公私立大学、短大、高専が加盟しています。様々な研修の機会が提供されていますが、特に毎夏開催されるSPODフォーラムが有名です。今年は、8月23日から徳島大学で開催されます。(因みに筆者も参加します。)

・SPODフォーラム2017
 8月23日(水)~25日(金)徳島大学/常三島キャンパス
 https://www.spod.ehime-u.ac.jp/wt/forum/

 

 FDにも様々な手法や目的がありますが、授業の基本を知ることは教員にもFD担当者にも有用でしょう。以下の本には、授業のアイデアやヒントがつまっています。

f:id:mohtsu:20170724201410j:plain

バーバラ・グロスデイビス『授業の道具箱』(東海大学出版会、2002年(原著1993年))

 

 

大学評価関連のイベント(8月)について

 認証評価が導入されたのは平成16年(2004年)ですが、その年、法人化された国立大学では、あわせて法人評価への対応も必要になりました。

 現在、盛んに提唱されているIR(インスティテューショナル・リサーチ)や教育の質保証も、特に国立大学の文脈では、大学評価への対応という側面が大きかったことは否定できないと思います。

 8月下旬、大学評価への関心から始まった2つの団体のイベントが開催されますので、紹介します。

・大学評価・IR担当者集会(大学評価コンソーシアム)
 8月23日(水)~25日(金)立命館大学/大阪いばらきキャンパス
 http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php

・高等教育質保証学会〔第7回大会〕
 8月26(土)、27日(日)大阪大学豊中キャンパス
 http://jaquahe.org/03news.html

 

 筆者が、初めて大学評価に関わったときのテキストを紹介します。個人的な話を書かせてもらえれば、第1回目の認証評価の際は、この本の著者から直接多くのことを学ばせていただきました。

f:id:mohtsu:20170710224739j:plain

関口正司『教育改善のための大学評価マニュアル-中期計画実施時の自己評価に役立つ25のポイント』(九州大学出版会、2004年)

個人情報保護法の改正について

 5月30日、平成27年9月に成立した改正個人情報保護法が全面施行されました。平成15年に個人情報保護法が成立して以来の大規模な改正になります。

 改正のポイントはウェブ上で簡単に確認できるので、詳細はそれらに譲りたいと思います。(例えば、以下の3ページ目にまとめられています。)
 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/151117_tf1_s4.pdf

 

 個人情報保護の強化を図ると同時に加工情報の活用を促進することが意図されているようですが、大学を管理運営する立場の職員にとっての最も大きな変更点は、これまでの主務大臣制が廃止され、個人情報保護委員会に監督権限が一元化されることかもしれません。つまり、この件について、文部科学省から大学の事情に特化したガイドライン等の指針が示されることはなくなりました。大学は、個人情報保護法改正の趣旨を踏まえ、学内規則の改定や運用の見直しを独自に進めることが求められます。

 

 各大学において、滞りなく規則や規程を整備するのは案外難しいものです。法律や省令等の最新の知識に加え、自大学に関する認識や法令用語を駆使する技能などの複合的な能力が必要になるからです。
 大学職員が、法令用語を正しく理解、また、解釈し、学内の規則等を作成するため、以下の類の本を手元に置いておくと便利です。

f:id:mohtsu:20170710223144j:plain

f:id:mohtsu:20170710223238j:plain

吉田利宏『新法令用語の常識』(日本評論社、2014年)、同『新法令解釈・作成の常識』(日本評論社、2017年)

IDE大学協会について

 現在、高等教育関係の学会、団体、コンソーシアム等の組織は枚挙にいとまがありませんが、比較的老舗の団体にIDE大学協会(Institute for Development of Higher Education)があります。IDEは、昭和29年(1954年)、民主教育協会(Institute for Democratic Education)として設立され、平成18年(2006年)、現名称になりました。
 http://ide-web.net/index.php

 

 一般には、年10回発行される冊子『IDE 現代の高等教育』によって知られているかもしれませんが、例年、各支部でセミナーも開催されています。IDE大学セミナーは、学園紛争最中の昭和44年(1969年)、IDE学生生活研究セミナーとして始まったもので、半世紀にわたり継続して開催されています。(約50年の各回のテーマを眺めるだけでも、その時代の大学の様子が偲ばれます。)

 

 この夏に開催されるIDE大学セミナーは以下のとおりです。

・北海道支部 8/28(月)、29日(火)「新しい教養教育の展開」
・東海支部 8/29(火)「学生ピアサポートをいかに組織するか」
・近畿支部 8/25(金)「人工知能と教育 -人工知能と人間の共進化を促進する教育とは-」
・中国四国支部 8/22(火)「高大接続 -大学入試改革-」
・九州支部 9/9(土)「大学のグローバルな高大接続戦略 -海外からいかに優秀な人材を受け入れるか-」

(東北支部は11/29(水)に、本部(首都圏)は2018年3/23(金)に開催予定)

 

 筆者は、『IDE 現代の高等教育』を定期購読しています。6月号の特集は「職員の人事マネジメント」でした。

f:id:mohtsu:20170710215129j:plain

 IDE大学協会の歴史を知るには、以下のような協会の記念誌が参考になります。

f:id:mohtsu:20170710215408j:plain

 『業績と回顧』 (IDE・高等教育研究所/ IDE50周年・高等教育研究所25周年記念誌、2004年)

指定国立大学法人の指定について

 6月30日、第3期中期目標期間(平成28~33年度)における指定国立大学法人の指定について発表がありました。

 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1387558.htm

 

 指定国立大学とは「教育研究水準の向上とイノベーション創出を図るため、文部科学大臣が世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を指定国立大学法人として指定」し、「その研究成果を活用する事業者への出資、中期目標に関する特例等」を認めるものです。

 今回、東北、東京、東京工業、一橋、名古屋、京都、大阪の7大学から申請があり、東北、東京、京都の3大学が指定を受けました。残りの4大学は「指定候補」として取り扱われます。

 

国立大学法人法の一部を改正する法律案

 http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1367544.htm

 

 指定国立大学法人は、申請自体厳しい条件がつき、旧帝大でも申請できない大学もあった模様です。

 中期目標に関する特例による効果(教育研究のパフォーマンスの向上、経営面での成果等)がどれほどのものか、未知数の部分も大きいと思いますが、国立大学のなかでも差別化の流れが緩まることはなさそうです。

 

 国立大学法人という仕組みを法律から理解するためには、以下のような詳細な解説書があります。

f:id:mohtsu:20170801224817j:plain

国立大学法人法制研究会『国立大学法人法コンメンタール』(ジアース教育新社 、2012年)

 

 国立大学の現状を理解ために、法人化前に想定されていた新しい国立大学の在り方を知るのも一つの手がかりになるかもしれません。そもそも、国立大学法人の制度はどのように考えられていたのか、以下の冊子(ウェブにも公開されています)から概要がつかめます。

f:id:mohtsu:20170710212829j:plain

『新しい「国立大学法人」像について(通称 グリーンブック)』(国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議、2002年)

 

 

学校教育法の改正(「専門職大学」等の制度化)について

 5月24日、改正学校教育法が成立し、これにより、平成31年4月から「専門職大学」、「専門職短期大学」の設置が可能になりました。大学に、新たな教育機関が加わるのは、昭和39年(1964年)に短期大学が制度化されて以来のことになります。今後、専門職大学に関する設置基準等の詳細な内容が規定される予定です。

*学校教育法の一部を改正する法律
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/detail/1387551.htm

 

 日本の大学教育と職業の関係は、古くて新しい問題のように思えます。戦前の大学は、工科、医科、法科等の実学を中心に発展してきた面は否定できないでしょう。戦後の大衆化した大学の多くも、卒業と同時に就職する日本の社会システムのなかで、学生の就職状況を競ってきました。それでもなお、大学は職業教育に否定的な反応があるように感じます。

 教育と社会(仕事)をつなぐ意義について、例えば以下のような本が参考になるかもしれません。

f:id:mohtsu:20170710210131j:plain

本田由紀『教育の職業的意義 ー若者、学校、社会をつなぐ』(ちくま新書、2009年)

 

ブログ始めました

 東海地区の私立大学に職員として勤務している者です。この度、一念発起してブログを始めることにしました。

 目的は、大学関係者、特に大学教育と教学運営(制度、組織等)に関心をもつ方々への情報提供を行うこと、そして自分自身の思考の整理に役立てることです。

 仮想的に中堅・若手の大学職員を対象者(読み手)に想定しました。原則として、個人的な主張は抑制し、大学に関する話題を冷静にフォローすることに主眼をおくことにします。参考までに、可能なかぎり書籍も紹介したいと思います。

 大学業界のトピックスを追うことで、最終的に大学と大学を取り巻く環境を鳥瞰する視点を多くの方々と共有することができれば望外の喜びです。