大学について考えるブログ

大学教育と教学運営に関心をもつ方へ

第4期中期目標期間における指定国立大学法人の申請状況について

  11月のこのブログで第4期中期目標期間(令和4~9年度)の指定国立大学の公募に関する通知にふれましたが、先月末が申請の締切で、申請状況が公開されています。

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00117.html

 

 今回は、筑波大学東京医科歯科大学九州大学の3国立大学法人が申請を行ったとのことです。

 因みに、第3期中期目標期間に7大学(東北、東京、東京工業、一橋、名古屋、京都、大阪)が指定国立大学法人に指定されています。

 

「在学契約」について

 平成29年(2017年)5月に改正された民法の施行が今年の4月1日にせまり、教育機関関係者のあいだで「在学契約」について関心を寄せる人が増えているようです。

民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

 

 今回の民法改正で、学生が滞納している授業料の時効(現行の2年から5年へ)や大学と取引業者との契約等に関した変更があり、各大学で事前に確認すべきことが生じると思われます。
 それと同時に、「在学契約」についての認識を改める必要がある場合も想定されます。在学契約とは、いわゆる民法に規定のない無名契約で、大学と学生のあいだで入学に際し結ばれたと想定されるものです。具体的に言えば、大学が学生に教育サービスを提供し、学生は学生納付金を支払うという契約(が存在するという立場)のことです。学生が大学の構成員として学内規則を遵守する義務もここから発生していると考えることもできます。

 今回の民法改正でも在学契約について条文でふれられたわけではありませんが、新たに定型約款制度が設けられたことにより、その手続きを踏んで、学内規則や入学時の誓約書等を整えておく方が望ましいと言えそうです。

「教学マネジメント指針」について

 先月開催された中央教育審議会大学分科会教学マネジメント特別委員会(第12回)において、「教学マネジメント指針(案)」が示されました。(大筋で了承されたとのことです。)

https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/12/000002840.html

 

 このなかで、教学マネジメントは「大学がその教育目的を達成するために行う管理運営」と定義され、これまでの中教審答申等で示された大学の教育改善に関連する手法が教学マネジメントという観点から一元的に例示されています。

 目次は以下のとおりです。

 Ⅰ 「三つの方針」を通じた学修目標の具体化 
 Ⅱ 授業科目・教育課程の編成・実施
 Ⅲ 学修成果・教育成果の把握・可視化
 Ⅳ 教学マネジメントを支える基盤(FD・SDの高度化、教学IR体制の確立)
 Ⅴ 情報公表

 

 今回の「指針」によって、直ちに大学に新たな義務が追加されるということはないようです。大学設置基準の見直しについては、今後設置される部会において議論される予定になっています。

 

  大学の教育改善に関して、中教審の答申を例に出すまでもなく、同じような指摘が繰り返されているように誰もが感じているのではないでしょうか。

 教育改善の個々の取組の実施はそれほど難しいものではないとしても、それらを全体として機能させることは容易ではありません。このような実状は、大学関係者なら実感をもって理解できることだと思います。

 大学のこのような実情を深く理解するには、組織としての大学を理解する必要があると思います。最近、大学の組織論や運営に関して新たなテキストが加わりました。

f:id:mohtsu:20200115200621j:plain

中島英博『大学教職員のための大学組織論入門』(ナカニシヤ出版、2019年)

f:id:mohtsu:20200116002706j:plain

中井俊樹編『大学の組織と運営(大学SD講座1)』(玉川大学出版部、2019年)

次年度の文部科学関係予算(案)について

 令和2年度(2020年度)の文部科学関係の予算案(総論)が文部科学省のウェブページに公開されています。

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672.htm

 

 国立大学法人運営費交付金は、昨年度の1兆970億5500万円から1兆806億7200万円へと約1.5%の減(マイナス163億8300万円)となり、国立大学の経常的経費が厳しい状況に変わりはないようです。

大学教育関連のフォーラムについて

 研究主体の学会とは異なる大学教育関係のコンソーシアムや協会が主催するこの春(3月頃)のイベントのいくつか紹介します。

 

・FDフォーラム(大学コンソーシアム京都)〔第25回〕
 2月29日(土)、3月1日(日)龍谷大学深草キャンパス
 http://www.consortium.or.jp/project/fd/forum

・大学教育改革フォーラム in 東海 2020
 3月7日(土)名城大学/八事キャンパス
 https://sites.google.com/view/tokaiforum2020/

・IDE高等教育研究フォーラム
 3月18日(水)一橋大学一橋講堂(東京都千代田区
 https://ide-web.net/newevent/blog.cgi?n=118&category=001

・大学教育研究フォーラム〔第26回〕
 3月18日(水)、19日(木)京都大学吉田キャンパス
 https://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/forum/2019/

「大学入試のあり方に関する検討会議」の設置について

 12月27日、文部科学省から、『「大学入試英語成績提供システム」 及び大学入学共通テストにおける国語・数学の記述式に係る今般の一連の経過を踏まえ、大学入試における英語4技能の評価や記述式出題を含めた大学入試のあり方について検討を行う』ために、大学入試のあり方に関する検討会議を設置するとの発表がありました。

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00063.html

 

 「大学入試英語成績提供システム」とは何のことか思う人もあるかもしれません。要するに、今回は見送られることになった、大学入学共通テストへの民間英語試験の活用のことです。

 

学校教育法施行規則等の改正について(大学院関係)

 先日、学校教育法施行規則(大学院に関する項目)及び大学院設置基準が改正されました(8月30日公布)。

http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1420657.htm

 

 改正された施行規則では、大学院の(1)「三つの方針」の策定・公表の義務化(2)学位論文に係る評価に当たっての基準の公表の義務化、同じく設置基準では(1)学識を教授するために必要な能力を培うための機会の設定又は当該機会に関する情報提供の努力義務化(2)経済的負担の軽減のための措置等に関する情報の明示の努力義務化 に関する内容が加わりました。

 いずれも新しい観点はないと思いますが、大学の情報公開がより強く求められる昨今の流れに沿って法令化されたもののようです。

 

 今回の学校教育法施行規則の改正は令和2年4月1日から、大学院設置基準の改正には令和元年8月30日から施行となります。

国立大学法人の業務の実績に関する評価結果(平成30年度)について

 国立大学法人は、中期目標期間(6年間)ごとに、いわゆる法人評価を受けますが、業務運営や財務内容等に関しては、毎年度、国立大学法人評価委員会の評価を受けることになっています。

 先日、昨年度(平成30年度)の評価結果が公表されました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/detail/1422680.htm

 

 評価結果は別にして、各国立大学の特徴的な取組の概略を一度に知ることができる機会でもあります。特に、指定国立大学の取組は否応なく注目されるところだと思います。

 因みに、先月には第4期中期目標期間(令和4~9年度)の指定国立大学の公募に関する通知があっています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1422033.htm